「押し目待ちに、押し目なし」——。FXの勉強をしていると、必ず出会うこの格言。頭では分かっていても、いざ強いトレンドを目の前にすると、「教科書通りのポイントまで待たないと…」と自分に言い聞かせているうちに、チャンスを逃してしまう。あなたにも、そんな悔しい経験はありませんか?
これは、まさに僕自身がずっと悩んできた壁でした。しかし先日、金額としては本当にささやかですが(+4,378円)、僕にとっては非常に大きな意味を持つトレードがありました。
この記事に、プロのような華麗な手法解説はありません。あるのは、一人のトレーダーが当初の計画に固執せず、市場の「声」を聴いて「ブレイクアウトエントリー」へと戦術を転換した、泥臭い「思考の記録」です。同じように悩んでいる誰かの、ほんの少しのヒントになれば嬉しいです。
1. トレード前の状況:頭の中は「押し目買い」一択だった
まず、なぜ「押し目買い」を狙っていたのか。週明けの相場は、どう見ても強気でした。大きな流れに乗るなら「買い」しかない。それは自分の中でも明確でした。
1-1. 当時の僕が考えていたこと
トレードの方向性を決める上で、自分なりにいくつか「追い風」だと感じる材料がありました。
- 大口の動向: 「ヘッジファンド達もゴールドの買いポジションを増やしているらしい」というデータが、強気な見方を後押ししてくれました。
- 市場の雰囲気: 「近いうちに利下げがあるだろう」という期待感が市場全体にあって、これがゴールドの価格を支えているように感じていました。
1-2. 当初の計画:教科書通りの「理想のポイント」を待つ
テクニカル的には、史上最高値をブレイクしたばかり。セオリー通りなら、ブレイクしたラインまで価格が戻ってきて、そこがサポートになる「レジサポ転換」を待つのが一番安全です。僕も最初は、「ここまで下がってきたらエントリーしよう」という、自分にとってのA+級のポイントを、ひたすら待つつもりでした。

そう、この時までは…。
2. 計画変更の瞬間:「押し目買い」から「ブレイクアウト」へ
相場が強すぎるとき、最高の押し目買いポイントは永遠に来ない。
これが、今回のトレードで僕が学んだ最も重要な教訓です。理想のポイントまで一向に下がってこない価格を見て、僕は自分の戦略そのものを見直す必要性に迫られました。
2-1. 戦略転換のきっかけとなった「2本の長い下髭」
理想のサポートラインまでは程遠い、浅い位置で価格がモミ合っていました。そして、その中で1時間足で2回連続で長い下髭をつけたのです。これは、僕には市場からの明確なメッセージのように見えました。「我々は下がる気はない。むしろ、ここからもう一段階上がるエネルギーを溜めているのだ」と。
2-2. 新戦略の策定:「ネックライン」のブレイクを待つ
この強い買いの意志を見て、僕は「押し目を待つ」という守りの戦略を捨てました。そして、より攻撃的な「ブレイクアウト戦略」に切り替えたのです。
具体的には、モミ合っていた価格帯の上限(ネックライン)に線を引きました。そして、新しいルールを自分に課しました。「このネックラインを、ローソク足の実体で明確に上抜けたら、それは上昇継続のサインだ。その瞬間に、迷わずロングエントリーする」と。

(図の解説:赤線の下のラインがブレイクアウトを確認したエントリー価格、上のラインがその後の上昇を見て利益を確定した決済価格です。)
2-3. エントリーの瞬間:経験則が背中を押した
そして、ついにその瞬間が訪れました。力強い陽線がネックラインをブレイクしたのを確認し、僕はロングでエントリーしました。僕の背中を後押ししたのは、「ゴールドは大した押し目も作らずにトレンドが続くことが多い」という、これまでの経験則でした。机上のセオリーよりも、自分が肌で感じてきた相場の特性を信じたのです。
3. トレードの管理:利益を守るための現実的な判断
エントリーした後も、常に不安はありました。
3-1. まずは「負けない」状況を作る
幸い、エントリー後に価格は上昇。1000ポイントの含み益が出た段階で、すぐにストップロスをエントリー価格(建値)に移動させました。これで、少なくともこのトレードで「負けることはない」。そう思うと、少しだけ心が軽くなりました。
3-2. 早めの利確。理由は「怖かった」から
「損小利大」が目標なので本当はもっと粘りたかったのですが、正直なところ、せっかくの利益が建値に戻ってゼロになるのが怖かった、というのもあります。その後の上昇の勢いが少し弱くなったように見えたので、「今の僕には、この利益を確実に守ることが最善の判断だ」と考え、+4,378円で決済しました。
今回のトレードで僕が学んだこと
この一回のトレードは、金額以上に大きな自信と、次に繋がる課題をくれました。プロにはなれなくても、自分なりに考え、市場に適応しようと挑戦することに価値がある。そう感じています。
- 学び1:一つの戦略に固執しない
「押し目買い」は有効な戦略だけど、それが通用しない相場もある。「ブレイクアウト」のように、状況に応じて武器を使い分ける柔軟性が大事だと痛感しました。 - 学び2:プライスアクションは「戦略変更」のサインにもなる
ローソク足のサインは、エントリーのためだけじゃない。「今の戦略は間違っているかもしれない」と教えてくれる、重要な道しるべでもあると学びました。 - 学び3:自分の経験則を信じる勇気
教科書通りのセオリーも大事。でも、最後は自分がその相場で感じてきた「肌感覚」や「経験則」を信じる勇気が、結果を分けることがあると実感しました。
まだまだ勉強中の身ですが、これからも自分のトレードと、そこから得た学びを正直に記録していこうと思います。
コメント